川とともに生きた先人たちが、畳で水害から街を守った知恵のシンボル
延岡市内には4つの大きな川が流れ込み、「水郷のべおか」と称されるほど水が豊かな土地で、水と共に暮らしてきました。
しかし、水の恩恵を受ける反面、水害にも悩まされていたのは否めません。
五ヶ瀬川沿いには、全国でも珍しい「畳堤」という特殊堤が980m残っています。
「畳堤」とは大正から昭和の初期にかけて造られたもので、高さ60cmのコンクリート製の堤防で上から見ると幅7cmの隙間があります。
現存している「畳堤」は延岡市街地の船倉町、紺屋町、中央通の一部、祇園町の一部、北町の五ヶ瀬川沿いの堤防です。
昔は大瀬川沿いにも設置されていたので、総延長は2,000mにも及んでおり、全部に畳をはめ込んだとしたら、約1,000枚の畳が必要になります。
畳堤の枠のサイズは、この地方の民家の畳がちょうど入るサイズで、周辺の民家から住民が自ら持ち寄り、この隙間に畳をはめ込んで水を防いでいたといいます。
まさしく、川とともに生きた先人の治水対策の知恵で、住民が協力してまちを守ったシンボルともいえます。
全国に五ヶ瀬川を含めて3つの河川に「畳堤」が存在しています。その中で五ヶ瀬川の「畳堤」が最も古いと推察されています。そしてデザイン的にも、「和」を感じさせる扇形をしており、平常時には橋の高覧のようにも見えます。さらに、構造力学的にも優れた、鉄筋コンクリートによるラーメン構造(ドイツ語で枠をラーメンといい、柱+梁溝の枠組みの隅角部を固定した構造)をなしています。
一般的にコンクリート構造物を施工する際、型枠をつくって、流動性の高いコンクリートを流し込み、固めて完成します。ところが、前記の扇形の型枠を組むとなると非常に手間がかかります。
当時構造物としては珍しく、大変貴重な工法によるものです。
備考 | 【アクセス】東九州自動車道延岡ICから車で5分 |
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